第53回
ドコモ口座の
ドメイン騒動
以前にドッペルゲンガードメインとドロップキャッチについて説明いたしました。その際に具体的な事例やそれを利用した事件についても紹介しました。最近になって、またしても大きな話題となっています。それはドコモ口座ドメインのドロップキャッチです。ドコモが以前にサービスを行っていたドコモ口座のドメイン docomokouza.jp がオークションにかけられたのです。では、これがなぜ大きな話題になったのでしょうか。そもそもドコモ口座のドメインが話題になる理由は何でしょうか。なぜドメインがオークションにかけられるのでしょうか。そのドメインがオークションでドコモ以外の他者に渡った場合、何が問題なのでしょうか。
ドコモ口座とは、NTTドコモが運営する仮想的な口座で、個人がコンビニから、あるいは銀行から入金することによって、その口座から他のドコモ口座へ、あるいは銀行の口座へ、そしてクレジットカード会社と契約している店舗に決済できるシステムです。NTTドコモが資金移動業者として運営していました。2020年になって個人の銀行口座が第三者によって、勝手にドコモ口座と紐付けされて、現金が引き出されるという事件が起こりました。詳しい手口は省きますが、銀行とドコモ口座側のそれぞれのシステムの脆弱性を利用して、簡単に他人のドコモ口座を銀行口座に結び付けられたことが原因です。この件も関係してか2021年10月にサービスを終了しています。そのドコモ口座のドメインが docomokouza.jp なのです。
NTTドコモとしては、このドメインを手放して、悪意を持った第三者が自由に使うことになれば大きな被害を生じることは十分理解しています。しかしNTTドコモの言葉を借りれば、手違いがあり、その口座の継続利用の手続きを怠ってしまったということです。そのため、ドメインの管理を委託していたドメイン管理会社の手にドメインの所有者が移ってしまったのです。ドメイン管理会社としては通常、そのドメインを公平性に基づいて、再販するためにオークションを行うのです。オークションはNTTドコモを含めて、原則誰でも参加することができます。もちろんその購入者が悪意を持っているか否かの判定は出来ません。
オークションは402万円で競り落とされました。通常、数千円程度の値段であることから考えれば非常に高額です。結果的にNTTドコモの発表を信じれば、オークション後の現在、そのドメインの所有権は再度NTTドコモに戻っているそうです。戻っていると確信を持って言えない理由は、現在その所有者が公表されてないからです。大方の見解ではNTTドコモがオークションに参加し、競り勝ったと考えているようですが、第三者が競り落とし、それをNTTドコモがさらに高額で買い取ったとも考えられます。
(出典)お名前ドットコムwebより
先に書いたように、悪意を持った第三者がドコモ口座のドメインを利用した場合、様々な詐欺が考えられます。詐欺に使われなくとも、有名なドメインであることは変わらず、また今でも様々なサイトにリンクが張られたままになっており、スマートフォンのアプリとしてもドメインが残っています。特にスマートフォンでは一度登録したアプリを消去する人は少ないと言われています。何かの機会にアクセスすることも期待できます。そのドメインに広告等のアフィリエイトによって利益を得られることでしょう。かつて有名な金融に係るサイトであることから詐欺に使って、相手をだまし、金品を窃取することは十分考えられます。その直接的な被害は国民が受けることになりますが、NTTドコモの信用にも大きく響くことでしょう。