第59回
ダークパターンと
サポート詐欺
先日、NHKの番組で「ダークパターン」について特集がありました。ダークパターンとはウェッブサイトでの、主に商品の購入や有料サービスへの会員誘導に際して、ユーザー(消費者)を騙すことによって注意をひきつけ、意に反した行動をとらせる、ユーザインターフェースを持つウェッブの仕様のことです。「騙す」といっても、商品を送らなかったり、サービスを受けていないにもかかわらず、極めて高額な料金を請求するという詐欺的な犯罪行為ではありません。消費者の心理を突いたり、注意をそらせ、消費者の要求と異なる操作を行わせ、さらに、わざと面倒な操作や処理を要求し、消費者の行動を妨害するような行為です。
ダークパターンの典型としては、商品の購入において、消費者が試しに極めて安価な1回のみの購入を求めているにもかかわらず、十分な説明をすることなしに、消費者の不注意を誘って、定期購入に促す手法があります。また最終的に購入する際に、意図しない手数料や高額な送料が付加されていて、消費者がそれに気づかず購入してしまう場合もあります。消費者心理に付け込むということでは、「残り1つ」だとか「現在この商品のページに23人がアクセスしています」という表示もそれに含まれます。事実ならばまだしも、必ずしも真実でない場合も多いのです。「あと1時間10分で終了です」と表示して消費者を焦らす、急かせるのも同様です。それらを組み合わせて消費者の不注意を誘うのです。さらに有料サービスの退会時において、極めて面倒な操作を要求し、結果的に断念させるように仕向けることもあります。
これらダークパターンに関しては、個人情報保護や消費者保護に厳しいEUやアメリカ合衆国では、その仕様は厳しく制限され、それを犯すことで多大な罰金が科されています。しかし国内では取り締まる法律がなく、事実上合法化されています。大手の商品販売サイトでも、その多くが大なり小なりダークパターンに類するウェッブの作り込みがなされ、一部のサイトでは悪質化し、国民生活センター等に苦情が増加しており、社会問題化しつつあります。
ダークパターンはこのように悪意が隠れているとしても犯罪ではありません。他方、同様に利用者(消費者)の心理を利用して、詐欺を行う行為で、最近、とみに問題になっているサポート詐欺があります。サポート詐欺は明らかに犯罪ですが、その内容はダークパターンと同じです。パソコンやスマホの利用者の心理を突いて犯罪行為、つまり詐欺に遭わせるのです。サポート詐欺では、パソコンやスマホの操作中に、突然、ウィンドウ(ウェッブ)が開き、明るい色で点滅させて驚かせ、さらに大きな音を立てて、利用者を焦られ、平常心を失わせ、脅したりすかしたりしながら指示に従わせ、金品を奪い取るのです。ダークパターンでは脅すことは有りませんが、利用者(消費者)の欲を利用して、ウェッブでの表示で焦らすことによって、平常心を乱し、意の沿わない購入に走らせるのです。
ダークパターンもサポート詐欺も消費者(利用者)心理を悪用して、平常心を失わせ、意に沿わない行為に導くのです。その違いは、どれだけ意に沿わないかという程度の問題であり、後者は最終的に金品を騙し取るという極めて損害が大きいというだけであり、その行為について、大きな差異はありません。双方ともに、その効果的な対策は消費者(利用者)が注意を払うことですが、前者に関しては大手を含め、商品販売、あるいはサービス提供サイトであり、規制をかけることは、その対策として十分効果的です。今後の政府、あるいは事業者団体の対応が期待されます。